小坂研究室

研究テーマ

①農耕地の植物相
 アジアにおける自然環境の改変、農業の近代化、農村の過疎化などの現象を、人と植物の関係を指標に研究しています。
 ラオス中部からタイ東北部にかけて、立木の多い水田が広がります。日本でもかつて、薪炭材採集や稲架作りのために畦畔木がみられました。熱帯林の伐採が問題とされるなか、樹木資源の保全と農業生産の向上を両立させる可能性を探ります。

(写真:水田に残されたフタバガキ科の樹木。タイ、ヤソトン県、2012年8月24日。)
 ラオスには農薬や化学肥料を使用せずに水田稲作を行ってきた地域があります。そこでは、水田の草本植物が野菜、薬、工芸品の材料として利用されています。日本で絶滅が危惧される水生植物も普通にみられます。水田の草本植物を例に、農業近代化の過程で変容する「雑草」と人の関係を考えます。

(写真:水田に生育するデンジソウ。ラオス、フアパン県、2012年7月27日。)
②外来植物の分布拡大
 近年、国境を越える人や物の移動が拡大することにより、地域の環境や文化が急速に変容しています。外来植物の世界的な拡大もその一例です。私たちの暮らしに様々な影響を与える外来植物を調べることで、変容する地域の生態史を描くとともに、地域に適した資源管理のあり方を考えます。
 日本で開発の指標とされるヨーロッパ原産の外来タンポポは、標高4000メートルを超えるヒマラヤ・チベット高地の亜高山帯にも生育し、野菜や薬として利用されています。

(写真:黄河源流域に咲く外来タンポポ。中国、青海省、2008年8月10日。)
 ヒマラヤ山麓で、「日本蔓」と呼ばれる植物に出会いました。南米原産の外来植物(ツルヒヨドリ、キク科)です。住民によると第2次世界大戦中に日本軍が持ってきたそうですが、そのような史実は確認されません。おそらく1940年代に急速に広まったと推察されます。

(写真:戦争の記憶を伝える「日本蔓」。インド、アルナーチャル・プラデーシュ州、2011年7月7日。)
③市場で販売される野生植物
 市場に並ぶ産物は、地域の人と自然の関係を映す鏡です。産物は地域や季節によって異なります。価格や流通形態は社会経済条件を反映します。野生有用植物の中には、安定した収穫を確保するため、民家の周囲に移植され始めたものもあります。市場植物の継続調査を通じて、グローバリゼーションのもとで再編される人と自然の関係を描きます。
 ラオスの市場では、多様な野生植物が栽培野菜と一緒に販売されています。食用の野草は、栽培野菜と同じ総称(「パック」)で呼ばれます。

(写真:毎朝夕に賑わう青空市場。ラオス、フアパン県、2010年6月27日。)
 市場で販売する野草は、自分で採集したものもあれば、知人から購入したものもあります。市場で販売する人は、決められた場所代を納めなければなりません。

(写真:水田の野草を混ぜて販売する女性。ラオス、フアパン県、2006年11月16日。)
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