東南アジアの内発的発展および変動のエネルギーと方向性に焦点を当てながら、地域発展・地域変動に関する教育研究をおこないます。
20世紀の東南アジアを振り返り、21世紀の東南アジアを考える、これが地域変動論の目指すところです。それは、とりもなおさず、20世紀の日本を振り返り、21世紀の日本を考えることにつながり、ひいては世界の現在と未来を考えることにもつながる、わたしたちはそう信じます。
東南アジアは多様性に満ちた地域です。そこには、この地域に固有の民族だけでなく、中国系、インド系、アラブ系などの移住民の子孫が生活しています。宗教 をとっても、上座仏教、イスラーム、キリスト教などとさまざまです。各国の政治形態を見ると、共和制も立憲君主制も、大統領制も議院内閣制も、自由民主主 義も社会主義もあります。
20世紀の100年は、東南アジアにとって激動の一世紀でした。タイを除く国々は、オランダ、イギリス、フランス、アメリカの植民地支配を経験し、第二次 世界大戦中には日本軍による占領にさらされました。戦後は反植民地闘争、独立、脱植民地化の道を歩んできています。タイも、植民地支配は免れましたが、王 制のもとで、近代化にともなうさまざまな変化を経験してきました。
とくに1960年代以後の「開発の時代」に、東南アジアでは急速な社会変容が生じました。この変化は、国民国家を枠組みとするナショナリズム、近代化、開発・経済発展、都市化などとして発現する一方、資本・労働力・文化のグロバール化の一環としての変化でもありました。
近年、東南アジアが直面した大きな出来事といえば通貨危機です。この危機は、東南アジアの経済に甚大な損失をもたらしただけでなく、連鎖反応的にさまざま な方面に大きな影響をおよぼしました。その結果、インドネシアのように国家体制に根底的ともいえる変化が生じた国もあります。2008年にはサブプライム ローン危機の影響がおよび始めました。
東南アジアをとりまく国際環境はめまぐるしく変化しています。イスラーム復興は活発に続いています。北方では中国が政治経済面ならびに軍事面で強大化しつ つあり、西方ではインドが台頭しつつあります。東南アジア諸国連合は経済面での統合を進めて投資環境を変化させつつあります。こうした変化は東南アジアの 政治経済社会文化に影響を与えずにはおきません。
地域変動論とは、このような東南アジアの社会変容の諸相を研究します。英語では、 Society and Developmentと表現します。時代的には近現代、地域的には東南アジアを中心としながら、必要によってはより長い時間軸、より広い空間軸で社会変 容を考えます。世界の諸地域には、その地域固有の社会変容のダイナミズムと論理が存在するのではないか、と想定しています。